「FXはリスクもあるが、少額で手軽に始められるので、早速始めよう!」と思っている方もいることでしょう。
しかし、油断は禁物です。
FX市場参加者のカモにならないためには、投資ルールをしっかりと設定し実践する必要があります。
今回は、初心者のためのFX投資ルール設定の仕方をお伝えします。
ビギナーが負けて挫折しないためには?
FXで負ける人には特徴があります。
代表的なものは、「高いレバレッジで大きな取引を頻繁にしている」、「変動が激しいマイナーな通貨ペアを取引している」、「損切りができず、塩漬けにしている」などです。
FXで負ける人のパターンで共通しているのは、特に決まりを作らずにトレードをした結果、損失を大きく出してしまったというケースです。
- 高レバレッジで取引 → レバレッジのルールを定めていない
- マイナー通貨ペアで取引→通貨ペアのルールを定めていない
- 損切りができず塩漬け→損切りのルールを定めていない
FXは、野球で言えば、怪我をせず毎試合に出場して、コツコツとヒットを積み重ねていけるかが重要であり、そのためには自分独自のルールを設定し、それを忠実に実践していくことがFXで負けて挫折しないための秘訣です。
FX初心者のための「自分ルール」の決め方
ではルールにはどんなものがあるか、設定例とともにご紹介します。
レバレッジのルール
設定例:「投資時のレバレッジ比率は2倍とし、相場変動時であっても5倍を超えてはならない」
投資の余力が生まれて、「チャンスだからもっと買いたい」という気持ちに負けてレバレッジを上げた結果、損失を被った人を何人も見てきています。
また、「投資時」と敢えて書いていますが、これは為替が変動する中で損益が刻一刻と変わり、それに応じてレバレッジ比率も変動するためです。
利益確定、ロスカット(損失確定)のルール
設定例:20%上昇したら利益確定、10%下落したらロスカット」または「20銭上昇したら利益確定、10銭下落したらロスカット
FX初心者の方は、慣れてくるまでは、ドルと円の通貨ペアから始め、「20銭上昇したら利益確定、10銭下落したら損失確定」というルールが良いでしょう。
損切りは投資家のみなさんを守る重要な役割です。
相場の世界には「2%ルール」と呼ばれる資金管理法がある
有名投資家アレキサンダー・エルダー氏が提唱するルールで、一度のトレードにおいて、損失は総資金の2%以内に抑えるというものです。
例えば、証拠金100万円を預けている場合、損失が2万円以内に収まるようにトレードを行います。
エントリーのルール
設定例:慣れるまで(FXを初めた最初の1年間)は順張りトレードに徹する
トレード手法は大きく分けて「順張り」と「逆張り」があります。
順張りとは、相場の動きと同じ方向にエントリー(ポジションを保有)することです。
一方、逆張りとは、相場の変動を見越して、動きとは反対の方向にエントリーすることです。
一般的には、トレードが上手くいった場合は、逆張りトレードの方が利益は高くなる可能性が高いですが、順張りトレードよりも高度なので、慣れないうちは失敗するリスクも高いです。
取引する時間のルール
設定例:慣れるまでは為替が最も動く時間帯(午後9時半から11時)に限定
FXは平日24時間いつでも取引ができますが、FXで稼ぐには為替が動く時間帯を狙うと良いでしょう。
為替が動く時間帯1:日本時間の午前8時〜9時
市場が活発に動き出すのが午前8時。
ウェリントン市場(ニュージーランド)、シドニー市場(オーストラリア)、東京市場が開きます。
特に、月曜日は要注意です。
週末に起きた「国際会議などの経済イベント」、「中央銀行総裁や政治家などの要人の発言」、「紛争・事件・事故」の影響が集約されて為替に反映されるからです。
為替が動く時間帯2:日本時間の午前10時半〜11時半
中国の上海市場が動きだす時間帯が午前10時半。
中国はGDPが世界第2位の経済大国であり、株価だけでなく為替にも大きな影響を及ぼします。
為替が動く時間帯3:日本時間の午後4時
ヨーロッパ市場・ロンドン市場が活発に動きだす時間帯が、午後4時。アジア勢に、欧州勢の参加者が加わることで取引が活発となり、為替が変動します。
ヨーロッパ各国の経済指標発表も順々と行われていく時間帯ですが、世界第4位のドイツ経済には要注目です。
為替が動く時間帯4:日本時間の午後9時半〜11時
ニューヨーク市場が開き参加者が一気に増加。
24時間の中で、為替が最も動く時間帯が午後9時半から11時です。
午後9時半から重要な経済指標が順次発表されますが、特に重要なのは、毎月第一金曜日に発表される雇用統計です。
この日は、FX投資家の中では、「お祭り」と言われています。
取引する通貨のルール
設定例:取引する通貨ペアは、ドル/円、南アフリカランド/円
FXで取引を行う通貨ペアは、米ドル/円、ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円などの主要通貨ペアだけでなく、中国元/円、トルコリラ/円などのマイナー通貨とのペアもあります。
また、円と外貨のペアだけでなく、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルなど、外貨同士のペアの取引もできます。
通貨ペアを選ぶポイントは、「値動きの大きさ」「スプレッド」「スワップポイント」「情報量の多さ」「流通量(取引量)」など。通貨の特徴を判断してから通貨ペアを選びましょう。
FX初心者が最初に始める通貨ペアは、円と外貨の組み合わせが良いでしょう。
理由としては、日本国内では、円通貨に関わる政治、経済などの情報が多いので予測しやすいのと、流通量も多く流動性の観点から円通貨に対する信用度も大きいためです。
中でも、円と外貨の組み合わせで、初心者におすすめなのが、米ドル/円、豪ドル/円、南アフリカランド/円の3つです。
米ドル/円の特徴
米ドルは、世界の基軸通貨。
アメリカはGDPが世界No.1であり、言わずと知れた経済大国です。
米ドルは、市場で取引される量が多く、他の通貨に比べて、値動きが小さいのが特徴。
米ドル/円のスプレッドは、他の通貨と比べて狭いため、投資コストを抑えられます。
米ドルは情報においても、政治や経済ニュースでも日々扱われているように豊富です。
世界的に景気が悪化すると、リスク回避先として、「ドル買い」が起こり、ドルの通貨価値が高くなると言われていますが、近年は、リスク回避先として円通貨が選ばれることが多く、ドル安円高の傾向となっています。
豪ドル/円の特徴
豪ドルは、高金利通貨であり、スワップポイント狙いで買われることが多い通貨。
日本は超低金利と言うこともあり、豪ドル/円の通貨ペアは、スワップポイント狙いの取引で人気のある通貨ペアです。
他の高金利通貨と比べて、流通量(取引量)は多く、スプレッドも狭い。
中国との貿易額が多いため、中国経済が悪化すると、豪ドル安円高トレンドになります。
オーストラリアの輸出は、原油、石炭、鉄鉱石などの鉱物資源の比率が多く、豪ドルの通貨価値はこれらの資源動向に左右されて変動するので「資源国通貨」とも言われています。
石油価格が下落すると、豪ドル安になる傾向。
南アフリカランド/円の特徴
南アフリカランドも、高金利通貨であり、スワップポイント狙いで買われることが多い通貨。
南アフリカは新興国であるため政治経済の不安要素があるのですが、それにも関わらず、南アフリカランド/円のペアに人気が集まるのは、スワップポイントが高いこと、そして500円と少額の資金でも取引できるからです。
南アフリカの主な輸出品目は、金やダイヤモンドなど鉱物資源であることから、豪ドルと同様、「資源国通貨」と言われています。
金の価格が下がると、南アフリカランド安になる傾向にあります。
最後に
繰り返しになりますが、「自分ルールは作って終わり」ではなく、それを忠実に実践していくことが、FXで成功するための秘訣です。
自分で作ったルールをしっかり守り、そのルール内で取引する。
投資は投機ではないことを常に頭の片隅におきながらFXに励みましょう。
- 著者:頼藤 太希
- (株) Money&You代表取締役 / マネーコンサルタント 慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる女性向けメディア「FP Cafe®」を運営。投資に関するコラム執筆、書籍の監修、講演など日本人のマネーリテラシー向上に努めている。著書は「一番わかる 確定拠出年金の基本のき」(スタンダーズ)、「税金を減らしてお金持ちになるすごい!方法」(河出書房新社)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャル・プランナー(AFP)。宅地建物取引士。