Topページ > 投資・資産運用 > 資産アロケーションを設定し、リスクをコントロールしながらお金を増やす投資手法
公開日:2017年4月20日

2017年に入り、安倍政権の経済政策であるアベノミクスは5年目を迎えましたが、皆さんは経済効果を実感できているでしょうか。過去数年間のアンケート調査では8割前後の人達が「暮らしが良くなったと思わない」と回答しています。しかし、この間の経済効果を見ると名目GDPは毎年増加し、上場企業全体では最高益更新が続いているほか、都心の不動産価格は急騰し、日経平均は8,000円台から1万8,000円台と2倍超、為替も1ドル70円台から110円台となり、外貨建資産を持っていれば差益は相当なものです。

つまり、アベノミクスは日本経済に一定の側面支援効果を発揮しているなかで、8割もの人たちの暮らし向きが改善しない他の原因を考える必要があります。

着実な資産形成に向けてのポイント

そもそもアベノミクスの目的はデフレからインフレへの大転換を図り、物価上昇を通じて景気や企業収益を拡大し、賃金上昇や消費拡大の好循環を築くことです。 

こうしたなかで暮らし向きを改善させるには、アベノミクス効果を通じて収入の2つの経路であるフロー収入(労働収入)やストック収入(運用収入)を増やす必要があります。ただサラリーマンの場合、企業収益が増えても内部留保を積み上げるばかりでフロー収入となる賃金を上げないのなら、それはアベノミクスのせいではなく企業の責任です。また、賃金は労働の対価として保障されている一方、リスクを取らないので増え方には限界があります。

一方、運用で稼ぐストック収入はリスクを取っている分、不動産価格や株価の上昇、円安がストレートに収入の拡大に繋がります。つまり、暮らし向きが上向いたと回答した2割近い人たちの多くは、アベノミクスによるデフレからインフレへの大転換を一早く察知し、減価していく現金ではなく、インフレ時に値上がりする不動産や株への投資で稼いだものと思われます。逆に言えば、8割前後の人たちの暮らし向きが改善しない最大の理由はリスク資産を持たず、利益を生まない預貯金で占められているからだと推測できます。

ただ、だからといってリスクを取ってまで運用する必要があるのかと思われるかもしれませんが、重要なポイントはインフレ経済の下では現金の実質価値が減価していくということです。

毎年インフレが1%ずつ進むと、1000万円の実質価値は10年後に905万円、20年後には819万円まで減価してしまいます。対策としてインフレ率を上回る資産収益率を上げるには、価格変動リスクのある金融商品への投資が基本となり、これらは概ねリスクが高い(低い)資産ほどリターンが大きい(小さい)という相関関係があります。

少子高齢化で社会保障が低減していく中での今後の人生を考えた場合、今リスクを取らないことが老後のリスクとなる可能性は非常に高いと言えます。既に皆さんの公的年金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって国内外の株や債券等のリスク資産で運用されているほか、確定拠出年金の運用成果はご自身の責任で行わなければなりません。

成功確率を高める投資手法とは

無論、株や不動産などのリスク資産への投資は、むやみに行えば取り返しのつかない損失が発生するリスクを伴うため、リスクの本質を理解し、適切にコントロールして収益に変えることを心掛ける必要があります。

では、具体的にどのような投資手法をとれば良いでしょうか。まず押さえておきたいのはリスク商品への投資である以上、これが絶対に正しいという投資手法はありません。このため、以下の投資手法は証券アナリストとして投資に関わってきた経験に基づく私の考え方です。

(1) 礎となる投資哲学を持つ

長期的な視点で成功確率を高めてくれる幾つかの原則、例えば確率的なアプローチ(期待値=確率×ペイオフ)を身に着け、長期的な視点を持って目先の結果に一喜一憂せず、何故この商品に投資したのかという意思決定の過程を大事にするなど、礎となる投資哲学に基づいて実践することです。そうした投資哲学を持たずに投資を始めると、氾濫する情報に惑わされて感情のコントロールが効かなくなり、よくある狼狽売りといった悪い結果をもたらす確率が高くなります。

【連載】(後編)氾濫する情報に惑わされない、投資に対する基本の考え方
さて前編のコラムでは、「収入の一定割合を投資に回し、ストックのお金を増やす」という意識を身につけ、リスクだけに囚われず、一方で安易な考え方での投資(投機)に流されない、自分なりの哲学を持つことが大...

(2)  大局的にシンプルにそして合理的に考える

株や債券などへの投資では、価格変動のリスク(不確実性)が利益の源泉となりますが、そのリスクを感覚ではなく様々な投資指標で定量化し、大局的にシンプルにそして合理的に考えることにより、柔軟な投資スタンスが維持できるようになります。

例えば、ざっくりと各景気局面での商品選択のイメージを頭に入れておくと良いでしょう。

【景気の底~景気拡大期】 株式全般、社債、ハイイールド債

【景気拡大期~景気の山】 株式 (一部業種)、REIT (不動産投資信託)、コモディティ

【景気の山~景気後退期】 現金・預金、国債

【景気後退期~景気の底】 債券全般

また、個別企業の株価は短期的には売りと買いの力関係である需給、長期的には企業業績や財務内容などのファンダメンタルズで動くと考えられ、最終的に「株価 = EPS(企業の業績)× PER(市場での人気)」で決まります。業績が良い企業は人気が出て買われ、株価が上昇するというのは普遍の原則であり、そうした企業を、投資指標からみた妥当水準から一時的に外れた局面を狙って売買することが投資の基本となります。

(3)  アセットアロケーションとポートフォリオによる運用管理

運用資金を各資産クラス(国内外の債券、株式、REIT、コモディティなど)毎の期待収益率とリスク(価格変動率)を勘案してアセットアロケーション(資産配分)を決め、アセットアロケーションに基づく複数の金融商品で構成したポートフォリオとして運用管理していきます。

この過程では、一定の分散(資産分散、銘柄分散、時間分散)とバリュー投資(割安時に買う)を行うために、投資環境とタイミングを見据えたうえで一定の時間をかけて金融商品の売買を行ない、全体のリスクを抑えて期待収益率を引き上げることを狙います。

まとめ

株や債券などへの投資では、価格変動のリスクが利益の源泉となるため、このリスクをコントロール出来る投資手法を用いれば、投資の成功確率は高くなります。今リスクを取らないことが老後のリスクとなる可能性が非常に高いことを頭に入れて、お金の活かし方や増やし方を身に付けましょう。

ケース1:35歳家族持ち会社員の資産運用
ケース2:45歳エリート会社員の資産運用

リスク許容度の見極め方、アセットアロケーションの決め方
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