
「…思い込みとは、コントロールできていないのではないかという不安に対する方法だと、常々思っている。本当は手仕舞いするべきなのに、何もできずにいるという不安感に怯えているより、自分が支配している振りをしていたいのだ。」(本書より)人事と思って聞いていれば、そんな事もあるだろうなと新聞の興味半分の記事を観るように、やり過ごし、すぐに忘れてしまうような指摘でしょう。しかし冷静に自己分析し、自己統制のできる人、すなわち投資を行う資格を持つ人には、年に一度でも読み返すべき「聖書」のような存在になる本です。
本書では「保険数理士(保険商品の開発部員)は誰も民間の保険会社の商品に加入せず、共済にしか入らない」と記されていますが、保険の現場に携わってきた筆者が感じたのは「保険金・給付金の受け取り現場、要は出口の部分を知らない理論だけの話」だなと。確かに筆者も、「保険は愛だ」などの感情をあおるセールストークは大嫌いですが、保険は理論だけに偏り、株式売買については「ゼロサムゲームだから素人は勝てない」と切り捨ててしまう部分については、異論を感じたところです。結局、不動産投資こそが素人でも安定収益(インカムゲイン)をあげることのできる唯一の方法、とまとめられていますが、これも不動産投資をあおる色が強く、ロバート・キヨサキ氏の再来かと感じる理由です。しかしこの本に書かれている大切なポイントは、「優位性」をもて、という筆者の言葉です。他者よりも強い、得意な部分を生かすことの必要性や、自身のポジションを改めて分析するには、良い本といえます。
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