Topページ > 投資・資産運用 > 【連載】(後編)氾濫する情報に惑わされない、投資に対する基本の考え方
公開日:2017年3月13日

さて前編のコラムでは、「収入の一定割合を投資に回し、ストックのお金を増やす」という意識を身につけ、リスクだけに囚われず、一方で安易な考え方での投資(投機)に流されない、自分なりの哲学を持つことが大事であると申し上げました。株や債券などへの投資では、価格変動のリスク(不確実性)が利益の源泉となるため、優れた投資哲学を持てば、そのリスクを感覚ではなく、様々な投資指標で定量化し、大局的にシンプルにそして合理的に考えることにより、柔軟な投資スタンスが維持できるのです。しかし、そうした投資哲学を持たずに運用を始めると、氾濫する情報に惑わされて感情のコントロールが効かなくなり、よくある狼狽売りといった悪い結果をもたらす確率が高くなります。

 

(前編はこちら)富裕層に学ぶ、投資に対する基本的な哲学とは

優れた投資哲学のキーワードは過程と結果

それでは、投資を実践していく過程において、優れた投資哲学に共通する原則とはどのようなものでしょうか。そのヒントとなるのが、米国投資銀行大手のゴールドマンサックスから財務長官となったロバート・ルーピンによる下記のスピーチです。

「我々が認識できる可能性は確実なものではないので、時として間違った判断が成功に結びつくこともあれば、極めて正しい判断が失敗に終わることもある。しかし、長い目で見れば、より深く考え抜いたうえでの意思決定は、全体としては望ましい結果に繋がり、結果そのものよりも、いかに検討を加えて意思決定が行われたかが評価されることになる。」

つまり、投資のように確率的なアプローチが必要な分野では、目先の結果に一喜一憂せず、「どのように意思決定を行なったか」という過程を評価すべきだと言っているわけです。

そして、長期的には、より深く考え抜いたうえでの意思決定は、不運やまぐれではなく、当然の望ましい結果に繋がると言っています。これこそ、優れた投資哲学に共通する原則として、投資を行なう上での拠り所だと思います。あとは投資に対する継続的な学習と経験を積み、右脳(感性・センス)と左脳(論理・分析)のバランス感覚を身につけて、実践に臨むだけです。

投資哲学に合わない株は買わない

それでは、こうした概念を実際の投資にどう活かすべきか、最近の実例でご説明しましょう。2017年スタートの1月に、NISA枠で最も買われた株は何だと思いますか。正解は東芝ですが、現在の東芝は会計不祥事や米国の原発子会社の巨額損失を背景に上場廃止の危機にあります。 東芝の株価は、2015年4月の500円台から昨年2月に155円まで下落後、リストラによる体質改善と主力の半導体事業の好調が市場に評価され、昨年12月に不祥事発覚前と同水準の475円まで急回復しました。しかし、その直後に再び米国原発子会社の巨額損失が発覚したことで232円まで急落したものの、1月に入ると出来高の急増を伴って307円まで上昇し、このタイミングでNISA枠でも買われたわけですが、3月7日現在216円なので、わずか2カ月で約30%の下落です。

では何故、12月に再び米国原発子会社の巨額損失の発表があったにもかかわらず、1月にNISA枠で東芝が買われたのでしょうか。理由は、「東芝は潰れないから、急落した今NISA枠で買っておけば、再び2倍以上になるだろう」という発想だと推測されます。ただ、この発想には、ルーピンが言う「いかに検討を加えて意思決定が行われたか」という過程、すなわちリスクを十分に考慮に入れた投資哲学が入っていないのです。時として間違った判断が成功に結びつくこともありますが、東芝は4月の2部市場への降格が確実なほか、1年後も債務超過なら上場廃止という中ではその確率は低く、少なくとも東芝を買うのであれば、米国原発子会社の処理の目途がついてから行うべきでしょう。 

柔軟な投資スタンスを維持するためのポイント

氾濫する情報に惑わされず、柔軟な投資スタンスを維持するには感覚ではなく、価格変動のリスクを投資指標で定量化し、大局的にシンプルにそして合理的に考えることです。日々の株式相場は、市場参加者の多様な意見が需給に現れており、ファンダメンタルズを反映した株価動向は、長期的な結果として成立しています。つまり、個別企業の株価は、短期的には売りと買いの力関係である需給、長期的には企業業績や財務内容などのファンダメンタルズで動くと考えられ、最終的に「株価 = EPS(企業の業績)× PER(市場での人気)」で決まります。

業績が良い企業は人気が出て買われ、株価が上昇するというのは普遍の原則であり、そうした企業を、投資指標からみた妥当水準から一時的に外れた局面を狙って売買することが投資の基本となります。

まとめ

投資を難しく考える必要はなく、日々の価格に神経質になる必要もありません。しっかりとした自分なりの投資哲学の下で、大局感を持って、投資環境のトレンドとその転換点にさえ注意を払えば、きっとうまくいくはずです。
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