Topページ > 投資・資産運用 > 【連載:第二回】誰も教えてくれなかったオフショア口座と、その投資の真実
公開日:2017年4月19日
更新日:2017年4月20日

前回の記事で、オフショアの概要を駆け足で見ましたが、オフショアの印象として強い税金に関する話と秘密主義の話について今回は取り上げたいと思います。

第一回:オフショアって怪しいところ? – 今更パナマレポートとは言わないけれど

「あなたの秘密、守ります」- 秘密主義の終焉と税務上の透明性

2008年の米国でのUBSによるプライベートバンク顧客の脱税幇助を発端に、銀行の秘密主義で有名だったスイスが法律を改正して銀行の顧客情報を海外の税務関係者の問い合わせに対して開示するようになったことで、プライベートバンクの顧客である富裕層のお金が動き出した、と言われています。オフショアにもそのような富裕層の秘匿資金があちこちあるのでは、と考えられ、パナマ・ペーパーがその全貌を明らかにしたかのように言われています。

しかし、それより前から犯罪に関連する資金洗浄の防止の観点からOECD(経済協力開発機構)が2000年からいわゆるタックス・ヘイブンに対する情報提供に関する協力体制や透明性に関する調査を発表しており、特にUSBの問題の直後である2009年に他国の税務関連に協力的かと言う観点で多くの国についてホワイト/グレー/ブラックで色分けをして公表することで、各国に対して情報開示を促した、と言う経緯があります。その流れを受けて、各国の税務当局間で税務情報の交換に関する協議がなされ、OECDを核として Exchange of Tax Information (税務情報交換)の取り決めがなされたのです。

この流れと同じく、アメリカ合衆国では、富裕層が高い所得税や相続税を逃れるために国籍を捨てて海外に移住するケースが後を絶たないため様々な法規制をかけて海外への流出を阻止しようとする中で、FATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)を2010年に制定し、2014年から施行しています。これは、米国から見て海外の口座に対して、その保有者(もしくはその最終的に利益を受ける人)が米国の納税義務者でないことが自ら証明することができない限り、その口座で米国関連資産の売却資金を受領した場合にその30%を源泉徴収すると言うものです。当然、米国外の金融機関が協力しないと実現しない話ですが、事実上協力せざるを得ない状況にあるため、オフショア地域の金融機関を含めて対応をしています。その中にはスイスも含まれていましたので、その当時、秘密主義が終わった、とも報じられたのです。

この域外での治外法権的な課税を行うFATCAを受けて、イギリスも類似の法律を施行させ (UK-FATCAと呼ばれました)、同様の報告義務等を世界中の金融機関に課したことから、世界的に金融機関の口座の保有者に関する情報の開示環境の整備を促し、そして世界版 FATCAとも呼ばれる CRS (Common Reporting Standard) がこの数年で日本を含めて稼働し始めているのは、皆さんも金融機関からのメール等で目にしているかもしれません。現在、UK-FATCA はCRS に収斂したことで、世界的にはFATCAとCRSの適用が行われていることから、主要オフショア地域や日本のような先進国を含む100カ国以上の国においては口座の所有者に関する情報が税務情報交換の一環で税務当局が取得できる環境が出来つつあります。

これにより、例えば日本から資金をオフショア地域の銀行口座に移し、そこからファンドに投資したとしても、CRSに基づく税務情報交換によって資金が銀行口座やファンドの投資家として捕捉される世界が出来つつある、と言うことなのです。もともと、日本ではある一定の収入と海外資産を保有している場合に確定申告時に税務署に海外資産の一覧を開示する義務があり、2015年度の確定申告から罰則規定も強化されましたが、CRSにより未申告であることが判明することで罰則適用も増えるかもしれません。

余談ですが、拙著ブログで世界的な流れに反してCRSの網を抜けることで金融立国を目指す某国の話を紹介していますのでもし興味があればどうぞ。

オフショアにおける課税とファンドの関係

ところで、課税を逃れるための行き先と言われる、租税回避地の税金のお話をしたいと思います。タックス・ヘイブンでは税金がない、と思われがちですが、実は、オフショアに住む人たちにも所得税がかかります。

例えば著者と関係の深いジャージー島では所得税率は最高で20%。また、島の税収と支出のバランスを考えると要らなかったものの、周辺諸国からの外圧により消費税も最高5%がジャージー島内で買い物をすると掛かるようになりました。

言い換えると、島のインフラ等の維持のために住人たちが納税することで十分な再分配が行われ続けてきているのです。ですので、非居住者のファンドという資金通過に対して課税する必要がない、とも言えるのです。

とは言え、非居住者による投資を行うためのファンドについても、実は適切なストラクチャーの元で組成されない場合や、課税の減免などの手続き不備などで減免措置を受けられない場合には課税されるので、租税回避地は全く課税しない、わけではないのです。

また、ファンドに投資する私たちにとって、もっと大事なポイントとして、課税が行われる場所が、(1) 実際の投資活動が行われるところ(2)投資活動の拠点、そして(3) 投資家の所在地、と3つ可能性がある、と言うことを理解すべきだ、と言うことです。そのうち、ファンド設立地が(2) にあたるのですが、そこが租税回避地によって適切に減免措置を受けたとしても、(1) や(3) で課税される可能性が残っているのです。

例えば、(1) でいうならば、ケイマン諸島籍のファンドが日本国内で発行される国債や公社債を保有した場合の利金に対しては日本国内で源泉徴収税が15%かかります。また、(3) について言うならば、単純なケースであれば私たちが日本の証券会社で購入したケイマン諸島籍のファンドを売却して利益が出た場合にはその利益に対して(日本株の売買と同じく)日本でキャピタルゲイン課税がされます。

とすると、(3) のような最終投資家の課税問題は(2) としてオフショアというか租税回避地を使ったところで最終投資家の拠点で必ず発生するのです。ですが、(2) で課税されて(3) で課税されるよりは投資効率が高いので好ましいと考えることからファンドを作る場所、すなわち(2) にオフショアが選ばれるのです。

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