Topページ > 投資・資産運用 > トヨタもピンチ?電気自動車で注目銘柄
公開日:2017年5月9日

自動車業界でテスラがゼネラル・モーターズ(GM)の時価総額を逆転するという、歴史的なイベントが起こった。テスラは自動車を販売してまだ10年も経っていない新興メーカーで、16年の販売台数はわずか7万6000台(前年比50%増)ほ。このテスラが、トヨタ、VWに次いで1000万台倶楽部に入ろうとしているGMの時価総額を抜いたのだ。これは、EVの成長性の高さに対する評価だけではない、インターネットとつながったコネクテッドカーによって自動車業界の勢力図が一変することへの期待なのだろう。トヨタでさえ生き残れるとは断言出来ない。EV車の現況と関連銘柄をチェックしておこう。

自動車業界は歴史的な変革期を迎える

テスラが時価総額で米国1の自動車メーカーに

17年4月3日、電気自動車(EV)世界大手の米テスラの時価総額は約480億ドルに拡大しフォードを抜いて2位になった。さらに4月10日には約510億ドルまで拡大しついにGMの時価総額を一時抜いた。自動車メーカーとして時価総額で米国首位になったのだ。GMは100年以上前の20世紀初に創業、08年にトヨタに抜かれるまで長らく販売台数世界一の自動車会社であり、自動車業界だけでなく米国産業の象徴だった。

世界の自動車メーカー時価総額ランキング(4月末)では、トヨタが約1800億ドル(約20兆円)と圧倒的な首位で、以下2位独ダイムラーと3位独VWが700億ドル台、4位独BMWと5位日本ホンダが500億ドル台と続き、GMは6位、テスラは7位となっている。テスラの時価総額はすでに日産より上だ。

自動車業界と電機業界の融合

自動車業界は今までの100年続いたガソリンエンジンの時代から新世代に入る。EV化が進めば、自動車はバッテリーとモーターで走るデバイス化する。一種の電機製品のようなものだ。電機製品ならインターネット端末としてIoTでネットにつながることも、クラウドでビッグデータを処理しながら自動運転することも可能になる。これがコネクテッドカーだ。ある調査では、2020年には9200万台の自動車が出荷され、その75%の車がインターネットにつながると予想している。自動車産業と電機産業は一つの巨大な産業になるかもしれないのだ。

ガソリンエンジン時代の蓄積したレガシーは一度リセットされる。将来は、自動車メーカーはソフトを提供し、組み立てはコストの安いエリアで世界的なサプライチェーンの中で受託製造サービス(EMS)の会社が行う可能性が高いだろう。パーソナルコンピュータや携帯電話がたどったのと同じトレンドだ。この自動車産業の大変革を狙って、グーグルやアップル、マイクロソフトといったITジャイアントが本格参入してきている。トヨタでさえ生き残れるとは断言できない。

2030年には自動車販売の40%をEVが占める

エネルギーセキュリティ、環境問題から自動車はガソリンと別離せざるを得ない。EVなどの次世代車が急激にウェイトを高めていく流れはほほ決まった。経済産業省の「EV・PHV ロードマップ検討会」が16年3月に出した報告書によると、15年実績ではガソリン車の比率は73.5%で次世代自動車は26.5%だった。次世代自動車の内訳は、ハイブリッド車(HV)が22.2%、EV・プラグインハイブリッド車(PHV)が0.6%だった。同検討会による30年の目標値では、次世代自動車の比率は50~70%に上昇し、ガソリン車は30~50%まで低下する。HVは30~40%、EVが20~30%を占め、EVのプレゼンスが増す見込みだ。

電気自動車の現況

テスラの販売台数は2万5000台と過去最高

テスラは4月3日の17年1~3月期の決算で、主力の高級セダン「モデルS」とSUV「モデルX」を合わせた出荷台数が2万5000台を超え過去最高になったと発表した。17年の上半期の出荷台数予想は4万7000台~5万台としている。量産タイプの「モデル3」については予定通り7月に生産を始める。モデル3は昨年4月に発表、すでに予約が40万台弱入っているようだ。モデル3の発売予定価格は3万5000ドル。予約には1000ドルを手付金として払われている。また、テスラは商業トラックやバスという新しいカテゴリーでもEV化を進めている。9月には商業トラックの詳細を発表する予定だ。

中国BYDがEVでは世界一

現在世界一のEVメーカーはテスラではない。中国のBYD(比亜迪汽車)だ。BYDはもともとリチウムバッテリーの大手。携帯用のリチウム電池では世界一で、そのノウハウを生かして自動車産業に進出。中国政府が、メーカーにも購買者にも助成金を支給して国を挙げてEVを促進したことで、16年に販売台数で世界一となった。16年のPHVの販売台数は約10万台に達している。すでに伝統的自動車メーカー以外があっという間に大手自動車メーカーになってしまう実例がここにある。

中国政府のEVに対する取り組みも、国をあげてBYDをサポートする局面から新局面に入った。4月25日に、外資系自動車メーカーの出資規制を緩和することを決めた。現在の外資の出資上限比率50%を、25年をめどに段階的に引き上げていく方針だ。EVなど新エネルギー車の普及を後押しする一環の流れだ。中国政府は25年の新世代車の普及目標を従来の2倍弱の700万台に上方修正した。自動運転車も25年までに本格販売するという目標も建てた。中国の新局面入りで、今後の大手自動車メーカーの戦略も変わって行くだろう。

HVで世界一のトヨタもEVでは出遅れ?

トヨタはHVではプリウスを中心に世界一の実績を残している。ただ、HVで先行した分EVでは出遅れているとの見方がある。17年4月に開催された上海モーターショーで、競合ライバル達がこぞってEVのコンセプトカーを出展しEVの販売戦略を発表したのに対し、トヨタはEV車を出さなかったからだ。もっとも、まだ世界のメガトレンドが決まったわけではないので、トヨタは後出しジャンケンをしているという見方もある。

電気自動車関連銘柄

3−Ⅰ)電気自動車(EV)、コネクテッドカー関連銘柄ロードマップ

量産技術は中国も持っているとしても、技術的には米国が先行していると見ていいだろう。まずは米国での関連銘柄からは目が離せない。

自動車革命に備えて世界的なM&Aが起こり始めているが、今後もこの傾向は続くだろう。将来的には、コネクテッドカーと自動運転を見据えて、自動車用半導体やカメラやセンサーがキーパーツになってくることは間違いない。

 

その前の普及の初期段階では、EVのバッテリーやバッテリー部材、チャージ施設などの業績が伴ってきていることから先行して注目をされるだろう。

3−Ⅱ)米国EV関連銘柄

〇テスラ(ティッカー:TSLA)

現在のEVはテスラを中心に回っている。EV大手としてだけでなく、太陽電池大手を買収したことで、自動車メーカーから再生可能エネルギーの会社としても注目度は上がった。17年1~3月期決算は、買収した太陽電池会社の合併効果もあるため売上は2.3倍の約27億ドル(約3000億円)に膨らんだが、最終利益は約4億ドルの赤字と前年同期より赤字幅を拡大した。テスラの赤字は設備投資期であるとして仕方ないとしても、実績PBRは10倍を超えている。世界の大手自動車メーカーはほとんど1倍台だ。バリュエーションからは割高感があるのも間違いないところ。

〇デルファイ・オートモーティブ(DLPH)

英国の世界的な自動車電装品メーカー。世界46カ国で生産販売を手掛け、自動運転でも先行している。車載無線ソフトウェアのモビエントを買収した。充電システム、充電ケーブルでもメリットが大きく、実はデルファイや独ボッシュや日本のデンソー(6902)などサプライヤーが、次世代自動車では一番儲かるのではという見方もある。

〇クアルコム(QCOM)

ワイヤレス通信機器の大手。モバイル用半導体では世界一。16年10月に自動車用半導体でトップのNXPセミコンダクターズ (NXPI)を買収し、自動車用半導体でも世界一になる。IoTやコネクテッドカー市場のキープレーヤーとなることは間違いなさそうだ。すでに世界中で多くの自動車が同社の通信機器スナップドラゴンという自動車用モデムを搭載している。アウディは自動運転機能強化のために最新のスナップドラゴンを採用することを発表した。

〇エヌビィデア(NVDA)

画像処理半導体(GPU)の大手。AIや自動運転用の半導体で技術革新をリードしている。世界最大の自動車部品メーカーである独ボッシュと量産車向けのAI自動運転システム開発について協業を始めた。自動運転は、ディープラーニングとAIに関する技術のブレークスルーで可能となる。ボッシュは、エヌビディアのGPUをフラットフォームにシステム開発を進める。エヌビディアはAI関連でもあり、株価は16年には3倍以上になった。日本のテクノロジーメーカーでもエヌビディアと提携していると言うことで関連銘柄として買われた銘柄もある。

〇米国リチウムバッテリー(LIB)関連銘柄

アロテック(ARTX)

アルバマール(ALB)

米国でもLIB関連銘柄はパフォーマンスがいい。

3−Ⅲ)自動車分野で天下をとろうとする勢力

自動車分野では新興勢力ではあるがITジャイアントの各社の動きは注目だ。

〇グーグル(GOOG)

〇アップル(AAPL)

〇マイクロソフト(MSFT)

その資金力とテクノロジーを生かして自動車分野にフルにコミットしている。

 

既存勢力の大手自動車メーカーも負けていられない。

〇GM(GM)

〇フォード(F)

M&Aを選択肢に入れながらコネクテッドカー分野に注力している。GMは昨年自動運転システムの新興企業クルーズ・オートメーションを買収、フォードもイスラエルのマシン・ラーニングのSAIPSを買収した。

世界的な複合企業も名乗りをあげている。

〇ソフトバンク<9984>

英半導体設計大手ARM(ARMH)を買収。IoTやコネクテッドカーを狙ってのもの。

 

〇サムソン(005930)

韓国電機大手のはコネクテッドカー分野で先行する米ハーマン・インターナショナル・インダストリーズ(HAR)を買収。

 

〇独複合企業のシーメンス(SIE)

は自動車向けソフトのメンター・グラフィック(MENT)を買収。

3−Ⅳ)日本EV関連銘柄

【大手完成車、部品サプライヤー】

〇トヨタ(7203)

世界トップクラスの自動車メーカー、HVの大手として次世代自動車でも有力視されるのは間違いないだろう。

〇日産(7201)

ルノー・日産グループに三菱も加わり商業車を含めた次世代車に注力。

〇デンソー(6902)

トヨタ系の日本のトップ部品サプライヤーとして、次世代車には全力。今年だけでも、カーナビ大手の富士通テン、東芝、NEC、イビデンなどと次世代自動車のテクノロジー面で矢継ぎ早に提携を強化している。

【リチウムバッテリー(LIB)】

〇パナソニック(6752)

トヨタ、テスラなどに納入。

テスラは増大する受注に対応するためには、LIBの量産および低コスト化がマストとして、パナソニックと提携して、世界最大規模のギガファクトリーを今年1月に米ネバダ州でスタートした。ここで受注残を抱えるモデル3のバッテリーを量産化する。18年までに年間35GWHのLIB生産能力に高める予定で、それは現在の世界全体のLIB生産量に相当する。なお、パナソニックは、自動車用LIBだけでなく、テスラが買収した太陽電池のパネルも将来手掛けるようだ。パナソニックは中国にも車載用バッテリーの合弁会社を立ち上げている。

〇GSユアサ(6674)

三菱、ホンダ向けを中心としたLIB

【LIB部材  セパレーター】

〇住友化学(4005)

セパレーターフィルム。

テスラ向けメインサプライチェーン。

〇東レ(3402)

セパレーターフィルム

〇旭化成(3407)

セパレーター首位

〇ダブルスコープ(6619)

韓国工場を増産中

【LIB部材 正極材】

〇住友鉱山(5713)

テスラ向けメインサプライチェーン。

〇住友化学(4005)

ジャスダックでLIB正極材を手掛ける田中化研(4080)を子会社化

 

【LIB部材 負極材】

〇昭和電工(4004)

〇日立化成(4217)

負極材世界首位

テスラ向けメインサプライチェーン。

 

【LIB部材  電解液】

〇三菱ケミカル(4188)

テスラ向けメインサプライチェーン。

〇ステラケミファ(4109)

LIB剤向けの電解液、添加剤

 

【LIB部材  バインダー】

〇クレハ(4023)

LIBの接着剤と正極も手掛ける。

 

【その他】

〇ダイヤモンド電機(6895)

蓄電システム

〇HIOKI(6866)

電子計測器

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