Topページ > 投資・資産運用 > 【はじめての株式投資】9回目:決算はもっとも大事なイベント
公開日:2017年6月19日

はじめての株式投資の連載も今回が最終回。ファンダメンタルズで一番大事な決算の見方を教えよう。株式投資は口座さえあれば誰でも始められるため敷居は低いが、常に勝っている投資家はかなり少ない。勉強不足で株式投資を始めても、理論武装したプロや、経験豊富なスーパートレーダーに簡単に勝てるほと相場は甘くはない。まずは、決算というイベントの考え方を身につけたい。トレーダーとして一生の財産になることだけは保証する。

誰でもアナリストになれる

今は四半期決算発表が当たり前になっているが、義務化されたのは2004年からだ。まだ13年程度。昔は企業の決算・財務分析をしたかったら、図書館に有価証券報告書を見に行かないと過去をさかのぼれなかった。企業のニュースをフォローしたかったら、新聞のスクラップを見ないとだめだった。だからこそ、アナリストの分析や証券会社の推奨銘柄の価値が高かった。個人で銘柄分析したければ四季報くらいしかなかった。

それが、四半期決算とインターネットで世界が変わった。四半期毎に決算短信がリアルタイムにウェブ上で見られるようになり、有報も簡単に過去をさかのぼれる。場合によっては、機関投資家向けの決算説明会の資料や社長の決算報告の動画などもすぐに閲覧できる。企業の活動や新製品の動向は簡単に検索でき、企業の開示情報はTDNETでリアルタイムに誰でも閲覧が可能になった。

アナリストが得ていた情報は、直接の会社訪問でインタビューする以外は、個人でも同じタイミングで同じ情報に接することが出来るようになったのだ。アナリストの地位は確実に低下した。インタビューでさえ、個人でもIRに電話すれば答えてくれるような時代になってきている。誰でもアナリストに簡単になれる時代だ。投資の付加価値は自分で生み出そう。

決算が読めれば株価が読める

決算がなぜ重要か。企業の理論株価は、企業業績で決まるからだ。テクニカルやテーマ物色にも収益チャンスはある。でも基本はファンダメンタルズだ。利益が伸びるなら株価の上がる可能性が高まる。

日本を代表する会社トヨタ(7203)を例に説明しよう。トヨタの過去7年間の四半期ベースの営業利益の推移と株価をプロットしたのが(図1)だ。大きなトレンドと天底は営業利益率と株価がきれいに相関していることが分かるだろう。利益が増えるなら株価は上がることが多い。テクニカルより判りやすいだろう。

テクニカルも需給もテーマ性も大事だが、なんといっても株価はファンダメンタルズと相関性が高いのだ。新興市場のように業績が読みづらく将来性がまだ固まっていない会社は別にして、大企業である程度会社の業績が読める会社ほど業績と株価の連動性が高くなる。決算が読めればだいたいの株価の流れが読める。ファンダメンタルズに裏付けされていれば安い時に自信をもって投資できる。

図1)

決算は営業利益にフォーカス

企業分析で一番重要なのはトップラインである売り上げと本業の利益を示す営業利益だ。経常利益段階や最終利益段階には、為替の損益や土地や株の売却損益などは一時的なものを含むことが多いので株価を見る上では営業利益だけに絞って構わないだろう。

3-1 営業利益のモメンタム

営業利益の四半期を見る上で一番大事なのは今期の営業利益とモメンタムだ。決算が出たときに一番にチェックしよう。

株式市場は実績など終わった期のことは大抵すぐに株価に織り込まれてしまう。重要なのは予想営業利益だといっていいだろう。ただ単に、会社予想の増収率と増益率が高ければいいというものではない。モメンタムが一番だ大切だ。今期大幅増益でも四半期毎で見てスローダウンしていると株価にはネガティブになることが多い。

東京エレクトロン(8035)は今年になって株価が5割以上上がっている。これはモメンタムが素晴らしいからだ。(図2)は株探で拾える同社の四半期毎の決算推移。17年1−3月期はこれだけの大きな企業でありながら売上がなんと58%増、営業利益は2倍になっている。東京エレクトロンの場合、7−9月の営業増益率は22%増、10−12月は33%増、1−3月で2倍と加速している。これがモメンタムで、株価には一番インパクトがある。

営業利益率の推移も大事だ。(図2)で判るとおりエレクトロンの直近1−3月の営業利益率は23.6%。前年同期の18.3%から5.3ポイント改善している。7−9月は1.8ポイント、10−12月は2.2ポイントの改善だった。明らかに採算も改善している。

モメンタムを見る場合、会社によって四半期毎に閑散期と繁忙期など季節性がある場合が多いので前期比よりも前年同期比をみること。

図2)東京エレクトロン(8035)の四半期ベースの決算推移

(出典:株探)

 

営業利益の進捗率

企業業績予想のベースは会社が決算発表時に出す会社予想だ。したがって会社予想の売り上げと営業利益に対する四半期毎の進捗率を見ることもモメンタムを見る上で大事だ。

四半期毎に標準の進捗率を25%とすれば判りやすい。第1四半期であれば通期予想に対し25%、中間であれば50%の進捗が標準ペースだ。第1四半期で通期営業利益に対し25%以上進捗していれば進捗率が高いという。季節性のある会社も多いので一概には言えないが、進捗率の高い会社は上方修正の可能性が高いと言えるだろう。

会社によって小まめに予想数字を修正開示してくる会社と微調整せずに決算発表時にドーンと修正する会社がある。だから上方修正した会社だけがいいという訳ではない。東証は、売上高で10%以上の増減、利益で30%以上の増減がある場合は修正開示を求めているが、判った時点で構わないとしているので、決算発表時まで修正しないこともあり得る。コンサバであまり業績修正をしない会社も多いため四半期毎の進捗率を見よう。進捗率も自分で計算してもいいが、ヤフーファイナンスや株探で簡単にフォロー出来る。

営業利益のサプライズ

モメンタム、進捗率が高くても、みんなが判っていれば株価は反応しないこともある。コンセンサスに対してサプライズがあるかどうかが株価にはインパクトがある。新興市場の銘柄などはアナリストのカバーが少ないので会社予想や四季報予想がコンセンサスとなるが、大型銘柄はアナリストのコンセンサス予想に対するサプライズが問われる。

どんなに会社予想に対していい決算でも、アナリストの評価以下ということもあるからだ。コンセンサスは、日経会社情報、ヤフーファイナンスなどで拾うことができる。

東京エレクトロンに戻ろう。会社の18年3月期の営業利益予想は2160億円だ。ヤフーファイナンスでエレクトロンの業績予想>業績と進むと進捗率とともにアナリストコンセンサスが見られる。アナリストコンセンサスは2208億円と、すでに会社予想は上方修正されている。したがってまだ先の話だが、18年3月期のエレクトロンの利益は2200億円を上回って初めてサプライズだ。決算前にはアナリストのコンセンサスを見ておくことを忘れずに。

営業利益の水準

営業利益の水準そのものも大事だ。営業利益率が高いと言うことは、その会社の商品やサービスのレベルが高くて、ビジネスモデルが優れていて、他社が参入しづらいことを示している。誰でも参入できるビジネスなら競争激化で利益率は低下するはずだからだ。

もちろん産業、業種によって水準は違う。小売や外食、商社などは労働集約的なビジネスは採算が低いことが多く、ウェブ関連のビジネスはコストが低いためで採算が高い。したがって、同業他社比較やその会社の長期トレンドで営業利益率の水準そのものをみる感覚も身につけたい。

東京エレクトロンで言うと、同業他社で比較しても営業利益率は極端に高い。今期の会社予想の営業利益率は22.0%。半導体製造装置で同業の日立国際(8035)が7.0%、スクリーン(8835)11.1%、ニコン(7731)6.4%、東京精密(7729)17.7%、アルバック(6728)12.8%、アドバンテスト(6857)10.5%、ブイ・テクノロジー(7717)14.3%、日立ハイテク(8036)6.8%、平田機工(6258)10.0%などだ。エレクトロンより高いのはディスコ(6146)くらい。ディスコは会社予想出しておらず、前期実績で23.1%だ。

東京エレクトロンを時系列で比較してみよう。今期の会社予想の営業利益率は22.0%。ITバブル期の01年3月期の16.7%、リーマンショック前のピーク08年3月期の18.6%を超える史上最高の営業利益率となる。シクリカルな上昇だけでなく、東京エレクトロンの世界でのプレゼンスが上がっていることの証明だ。

トヨタでいうと今期予想の営業利益率は5.8%。自動車の採算は思ったより低い。トヨタの過去最高益の16年3月期の営業利益率は10.0%だった。このへんが東京エレクトロンとトヨタの株価の位置の違いになっているのだろう。

同業比較や海外比較も有効だ

業績を比較するのに、同業他社比較やグローバル企業であれば海外のライバルとの比較も重要になってくる。ヤフーファイナンスで東京エレクトロン>業績予想>業績に進むと【他社比較】もでてくる。

アドバンテスト、SCREEN、ニコンなどとの比較がでてくる。トヨタでも、ホンダ、日産、マツダとの比較がでてくる。営業利益率水準での比較も重要だが、こういったサイトで業種間の売上や利益のトレンド、増収率、増益率などの違いを意識しておくことも大事だ。

同業他社と比較して、どうして差がつくのか?製品のミックスなのか?新製品動向なのか?マネジメントなのか?こうした意識をもって、決算短信をもう一度眺めてみよう。決算短信には、セグメント毎の売上や営業利益率がでてくる。国内と海外の採算も判ることが多い。好調な製品も振れてある。説明会資料があればさらに詳細が分かる。こうした分析で、光る銘柄、割安な銘柄を探し当てることができる。

海外比較も大切だ。エレクトロンなら競合するのは米アプライドマテリアルズ(AMAT)や蘭ASML(ASML)だ。自動車のトヨタなら、米フォード(F)やゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VOW)だ。米電気自動車大手のテスラ(TSLA)と比較する必要もある。

世界中の株式市場は、海外年金やヘッジファンドといった同じような巨大な機関投資家が運用している。彼らはグローバル企業に関しては、国境を越えて比較して売り買いしているのだ。僕たちも海外比較を意識しておいた方がいい。

こうしたファンダメンタルズ分析は簡単ではないが、この努力を続けると、ある程度は四半期毎に短信をみるだけで会社の内容が見えてくる。グローバルで同業の決算をみると日本の会社の利益も予想がつく。そうすると株価のトレンドも見えてくる。株価のトレンドが見えると勝てる確率は高くなる。株式市場は博打ではない。頭を使ったものが勝てる市場だ。努力するものが勝てる市場だ。

9回に渡ってはじめての株式投資に関するコラムをすすめてきた。経験を積み、勉強するほど楽しくなってくるのが株式市場。是非、頑張って勝ち組になって欲しい(完)。

【連載】
1回目:はじめて株式投資ーこれだけはやってはダメ
2回目:投資で一番大事なディシプリン(規律)
3回目:株式市場は美人コンテスト
4回目:まずは木よりも森をみること
5回目:テクニカルとファンダメンタルって?
6回目:デイトレか中長期かタイムフレームを意識しよう
7回目:自分の回りの変化に投資すれば大化け銘柄をキャッチできる
8回目:スクリーニングができれば銘柄ピックは簡単
9回目:決算はもっとも大事なイベント(今回)

【関連記事】
【関連銘柄ウォッチ】iPhone8のアップル関連本命銘柄は?
トヨタもピンチ?電気自動車で注目銘柄
実例含め簡単に解説、モメンタム投資の特徴と注意点とは?
【準備編】住み替えのプランニングで考えるべきこと、売り買いの順番は?