ビットコインの法的位置付けについて
ビットコインなどの仮想通貨は、2016年に交付された資金決済法により今年(2017年)春には支払手段の一つとして認められるようになりますが、税法上は引き続き法定通貨(日本円または海外通貨)とは異なり、資産として取り扱われるのが原則であると考えられます。そのため金地金のような現物取引のケースと同様に考えるのが適切だと思われますので、まずは金地金の例を基本にして考えてみましょう。
ビットコインの売却益についての課税
個人がビットコインの取引を行って得られた収益は、所得に該当し所得税の対象となります。所得区分については、金地金と同様に考えると、サラリーマンなど給与所得者がビットコインの売却で得た利益は、原則譲渡所得に該当し、給与など他の所得と合わせて総合課税の対象になると考えられます。この場合、所有期間が5年以内であれば、ビットコインの課税所得は以下の通りになります。
「課税所得=ビットコインの譲渡益+その年のビットコイン以外の総合課税の譲渡益-譲渡所得の特別控除50万円」
また所有期間が5年超の場合は、上記の課税所得に1/2をかけた金額が課税される譲渡所得の金額となります。株式等の売却での分離課税とは異なり、この譲渡所得の金額は他の総合課税の所得と合算されることになりますので、結果として給与所得にもかかる累進課税の税率が上がり全体的な納税額が増えるなど注意が必要です。
また、営利目的で継続的にビットコインの売買を行っている場合、事業所得又は雑所得に該当し、総合課税の対象になる可能性があります。どの事業所得に該当するか、または雑所得に該当するかは個々のケースごとに判断することとなりますが、事業として成立するものであるか、人的・物的設備が整っているか、時間を割いて取り組んでいるか、などを判断の基準にして区分するようですが、明確な判断基準は無いため税務署や税理士に確認取りながら判断する必要があるでしょう。
雑所得の場合、控除額がないため全額課税対象となります。ただし、年末調整を行っており、確定申告を行う必要のない給与所得者で給与所得以外の所得額が20万円以下の場合、確定申告は不要です。
事業所得となる場合は、事業の総収入として計算され、必要経費を差し引いて所得を算出します。
取引で損失が出た場合の控除
一方で取引において、譲渡所得の計算上生じた損失がある場合、金地金と同様に考えると他の所得との損益通算はできません。例外としては、同一年内に他の譲渡所得(金・ゴルフ会員権・美術品などの売却益)がある場合はビットコインの売却損をその範囲内で控除できます。雑所得の計算上生じた損失があり、同一年内に他の雑所得があれば、売却損をその範囲内で控除することができます。
事業所得の計算上生じた損失がある場合は、他の所得金額との損益通算が可能です。損益通算をしても控除しきれない損失がある場合、青色申告をしていれば翌年以降3年間所得金額から繰り越し控除が可能です。
消費税について
ビットコインの交換時は消費税が発生するものと考えられています。消費税の納税義務者は売上高1,000万円以上です。そのため、1,000万円以上の規模で事業として仮想通貨の取引等を行っている場合は、納税義務があります。なお、平成29年度税制改正大綱で、「資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする。」とされており、平成29年(2017年)7月1日以後は仮想通貨の取引に係る消費税は非課税となる予定です。
ビットコイン取引で生じた所得の計算では、取得時の価格・経費などの情報が必要になりますので、後になって確定申告が必要だと気付いてから慌てないようにきちんと記録・管理しておきましょう。また、ビットコインに関しての税制については確定的な判断がなされていないため、この記事の内容はあくまで参考としていただき、個々の事案については、税務署または税理士にご相談していただきたいと思います。
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