Topページ > 納税 > 求められる税制改革、日本の税制がベンチャー企業への投資の足かせになっている
公開日:2017年4月10日

YouTubeを知らない人は少ないでしょう。日本で、Youtubeのような起業家に対して投資家が支援しているとは言い難いです。それはベンチャー企業に対する投資額の国際比較でも明らかになっています。その大きな要因のひとつに日本の証券税制が挙げられます。

日本税制がベンチャー企業への投資の足かせになっている

はじめに

YouTubeを知らない人は少ないでしょう。動画を世界中で共有できる画期的なシステムに対して、創業時に投資家が支援して現在の地位を確立しています。アメリカが起業家のイノベーションに対して出資したのはアップル、グーグルなど事例は豊富です。反対に日本ではYoutubeのような起業家に対して投資家が支援しているとは言い難いです。それはベンチャー企業に対する投資額の国際比較でも明らかになっています。その大きな要因のひとつに日本の証券税制が挙げられます。

ベンチャー投資額

(出典元:内閣府HPを筆者が加工)

日本の証券税制は大企業への投資促進に偏っている

証券税制のターニングポイントは平成15年1月から特定口座制度を創設したことです。平成14年9月28日の読売新聞の世論調査から背景が読み取れます。証券取引を活性化させるために必要なことで最も多い回答は「税の仕組みを簡素化する」です。

特定口座制度

特定口座を設ければ、株式等の売買損益などの所得金額の計算を証券会社が代行してくれます。特定口座はさらに2つに枝分かれしますが、源泉徴収口座を選択すれば、証券会社が納税まで肩代わりして、源泉徴収した段階で確定申告が省略できます。

この証券会社が間に入る以上、必然的に証券取引所で流通されている上場株式等に限定されます。よって、上場企業の投資促進に偏るのは目に見えています。

NISA制度

平成26年1月から導入された制度です。証券会社にNISA専用の口座を設ければ、上場株式等の年間の投資額が少額の場合は売却益と配当金が非課税になります。非課税期間は5年間です。つまり、確定申告の手間が省けて一石二鳥です。そのNISA制度は拡充されています。

イ、非課税枠の拡大

平成28年からは年間の投資額が100万円→120万円になりました。

ロ、ジュニアNISAの創設

平成28年4月から未成年者専用の口座が設けられました。非課税枠は年間80万円であり、非課税期間は5年間です。

ハ、積立NISA制度の創設

2018年から新たに制度が設けられます。非課税枠は40万円であり、非課税期間が20年と長いのが特長です。

損益通算が上場株式等と非上場株式のグループ分けされる

平成27年までは年間の株式等の売却損は翌年以降の株式等の売却益・配当等と相殺できましたが、平成28年からは上場株式等は上場株式等、非上場株式は非上場株式どうしだけしか損益通算をすることができません。言い換えれば、ベンチャー企業の株式等の売却損を上場株式等の売却益と相殺できない分、損益通算制度が縮小されたことを意味します。

以上のように、現在進行形で上場株式等の投資へ誘導する証券税制になっていることが分かります。

上場株式等の投資促進に偏重するとイノベーションは促進されない

投資先の上場企業はイノベーションには不向き

そもそも上場できる理由は既存のビジネスモデルが市場に適合したからです。その方向性に経営するのが自然な流れです。また、新規事業に手を出すにしても企業買収によりお金でノウハウを買っていることはワタミが福祉事業に参入した経緯からもて明らかです。

上場企業が保守的なエピソード

ソフトバンクの創業者・孫正義は1億円を元手に起業しましたが、次のエピソードからも日本の上場企業の保守的な考えがうかがえます。孫は1979年に自動翻訳機を発明しましたが、シャープに買い取ってもらうまでに東芝やキャノンなど大手20社を回って断られています。

ベンチャー企業が起業するための資金調達先は金融機関に依存せざるを得ない

製品の発明やYoutubeのように新しいアイデアがあっても資金がなければ起業することはできません。その資金供給をする側の金融機関は実績を重視します。融資をする以上は利子をつけて返済してもらう必要があり、不良債権になるを最も恐れるからです。したがって、実績のないベンチャー企業が融資を受けるに不利なのは明らかです。

なぜアメリカではベンチャー企業への投資が活発に行われるのか

日本の批判ばかりしてもベンチャー企業への投資額は増えません。今度はアメリカへ視点を移します。アメリカがベンチャー企業への投資が活発な理由のひとつに証券税制が挙げられます。それは損益通算の違いです。アメリカでは株式等の売却損は給与所得や事業所得などと相殺できて、所得金額が圧縮されます。それによって、節税という形でベンチャー企業への投資に失敗してもリスクは軽減されます。売却損は日本のように切り捨てられません。しかも、所得金額と損益通算ができる期間は無期限です。その結果、アメリカには183兆円の資金を運用する大手のベンチャーキャピタルが存在します。日本のベンチャーキャピタルの資金運用量が億単位と差は歴然としています。

アメリカと比較して浮き彫りになる日本の証券税制の問題点

本来、所得税の課税対象となるべき所得金額とは税金を負担する能力です。ということは、株式の売却損が生じたら納税する財源は減少しているので、アメリカのように給与所得などの他の所得金額と損益通算されるべきです。しかし、日本の証券税制では株式の売却益としか損益通算は認められていません。その理由をたどると株式の売却益が課税されることとなった昭和63年度の税制改正まで遡る必要があります。証券会社で株取引による所得金額の把握が困難だったために、株式の売却損を多く計上して、不当に他の所得金額と損益通算で脱税されるのを恐れたことが背景にあります。それを裏付けるように特定口座の制度により、証券会社が株取引による所得金額が把握できる体制と同時に、上場株式等の売却損が売却益から控除しきれない残額は3年間の繰越が認められるようになっています。証券会社は介入しているということは、証券税制の制度設計にベンチャー投資のような非上場株式等の取引は蚊帳の外に置かれてきた気がしてなりません。

新たな価値の創造が投資家の使命

資本主義において、資本と経営の分離がベンチャー企業にまで浸透しているのはアメリカです。Youtubeのように社会貢献しているのは承知の事実です。同じ資金供給するのにも保守的な金融機関よりも、投資家のほうが向いているのはアメリカで証明されています。

実は日本にベンチャー企業を育成するためのエンジェル税制という優遇税制が存在します。最後にそれを紹介して締めくくります。

エンジェル税制とは

一言でいえばベンチャー企業への投資した時点と株式を売却した時点における優遇税制です。

エンジェル税制

(出典元:経済産業省HPより引用)

  • 投資した時点

投資した金額がその年の所得金額から控除できます。具体的にパターンは2つあります。

  • 給与所得や事業所得などの総所得金額から投資額から2千円をマイナスした金額を控除する方法
  • 投資額を上場株式等・非上場等株式等の売却益から控除する方法
  • 売却した時点

非上場株式等にもかかわらず、売却損が3年間繰越して、翌年以降の上場株式等・非上場株式等の売却益から所得控除できます。しかし、売却損を計算するときはベンチャー企業の株式の取得価格から投資額を控除した残りの金額を原価として計算します。

 

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