Topページ > 納税 > 国民の払った税金は企業にプール、消費税は課税不公平の温床か
公開日:2017年3月15日

ところで、当時の民主党(現:民進党)の野田政権が消費税を5%から8%に増税した理由を思い出してください。「社会保障と税の一体改革」の一環によるものです。当然、社会保障に使われるはずですが、現実は5千億円の消費税が支払先の会社にプールされています。しかも、制度に則りせっかく消費税を支払っても自分に還元されない仕組みになっています。しかし、政府はそれを是正するために着々と手を打っています。それが平成35年10月1日から導入予定のインボイス方式です。

なぜ消費税は会社にプールされるのか

そもそも消費税はどう課税されて、誰が納付するの?

そもそも消費税は支払先の会社が消費者に代わって、税務署に納付する仕組みです。具体的には次の図の通りになります。

  • 原材料製造

一番左側のように青色の1,600円の預かった消費税を税務署に納付するのが原則です。

  • 完成品製造業者

赤く囲んだ売上に対する消費税4,000円の課税では、①の原材料製造で納付した1,600円分が2重で納付されます。そこで、支払った仕入れに対する消費税1,600円を控除した残り2,400円に対して課税します。

上記の通り、各流通業者によって消費者が支払った消費税を納税する仕組みになっており、要するに各流通過程で仕入れに対する消費税を控除した青色の部分に課税することで、消費者が支払った消費税を税務署に納付する結果になります。

消費税を会社にプールする合法的な仕組み

会社が消費税を納付すれば、プールされる問題は生じないはずです。しかし、青色の金額のうち中小零細企業の設けられた特例制度によって本来納付されるべき5千億円が、実は合法的に会社の手元に残っています。その原因は免税制度と簡易課税制度にあります。

  • 免税制度

原則、課税売上高が1千万円以下なら上記の図の青色の部分が納税免除になり、会社にプールされます。このような会社を免税事業者といい、反対に消費税を納税する会社を課税事業者といいます。

  • 簡易課税制度

そもそも簡易課税制度とは、仕入れに対する消費税を実額ではなく、「課税売上高×みなし仕入率」という概算額で計算する制度です。みなし仕入率とは業種別に国の定めた仕入率です。この制度は課税売上高が5千万円以下の会社に認められています。仕入れに対する消費税が実額より大きくなると節税になり、会社は消費税をプールできます。問題なのは仕入率が実額より簡易課税制度のほうが大きい点です。次の図の通り、会計検査院の統計がそのことを証明しています。

右がみなし仕入率、真ん中が実際の仕入率、左は会社がプールしている割合です。特に製造業では実額と概算額がかい離して、プールしている割合は22%にも及びます。実際、会計検査院の調べによると、消費税が免除されている会社は全体の4割に及びます。政府はこの現状にメスを入れようとしています。

2、インボイス方式の導入はの狙いは会社に消費税をプールさせないこと

(1)インボイス方式とはどんな制度

売上に対する消費税から控除する仕入れに対する消費税を請求書に記載されている金額から厳密にカウントする制度です。特徴なのは消費税が免除されている会社から仕入れた分の控除を認めない点に尽きます。導入予定は平成35年10月1日からです。

(2)インボイス方式によって課税の公平が実現できるメカニズム

①免税事業者ではB to B(企業間取引)が不利になる

得意先の会社は免税事業者に課税事業者となるように要請してくるのは容易に想像できます。理由は次の図を見ると明らかです。

得意先の会社から見た消費税の計算の比較です。右側は課税事業者から仕入れた場合で、消費税の計算で4,000円が控除されます。ところが同じ仕入でも免税事業者の場合は同額が控除されません。よって、納付額は左の1,600円ではなく、仕入れに対する消費税4,000円を控除する前の5,600円になります。

「免税事業者=年商1千万円以下」が得意先に筒抜けになる

インボイス方式の導入と同時に課税事業者は登録番号を取得して、請求書に記載する義務が課せられます。

得意先に請求書を発行する以上は、登録番号の有無は会社の信用問題に直結します。それによって、免税事業者が営業活動で不利になるのは身に見えています。

簡易課税制度の廃止

課税事業者が消費税をプールできる制度である簡易課税制度が廃止されます。請求書をベースに仕入れに対する消費税を厳密に計算する以上、不要なのは当然です。

3、なぜ自発的に課税事業者になることを促さなければならないのか

(1)消費税の導入過程に課税不公平のルーツがある

まずは最初に消費税導入を打ち出したのは大平内閣です。実際に導入する10年前の話です。その背景には1970年代に欧州諸国で付加価値税(日本でいう消費税)を導入したことにあります。お隣の国・韓国も同様の理由で1977年に10%の付加価値税を取り入れています。ところが、日本では国民の支持が得られず、総選挙中に撤回しました。それでも議席数を減らしています。次に1987年に中曽根内閣が売上税を国会に提出していますが、大平内閣と同様の理由で廃案に追い込まれています。実際に導入されたのは1989年の竹下内閣の時です。その当時の首相は竹下登ですが、2か月後にリクルート事件と相まって辞任しました。

(2)消費税導入は課税不公平からのスタート

まず、消費税が合法的に会社にプールされていた金額は1兆円を超えていました。その理由は3つあります。まず最初は免税制度です。現在のように1千万円以下ではなく、3千万円以下でした。その結果、免税事業者の割合は6割に上ります。次に存在しているのが簡易課税制度です。この制度の創設時に適用されたのは、課税売上高が5億円以上でした。それが4億円、そして現在の5千万円と適用できる範囲を狭くなっています。そして最後は、限界控除制度です。創設時は免税点の課税売上高が3千万円を超えても、3%の税率で課税するのではなく6千万円までは段階的に軽減する措置が取られていました。その最高ラインが5千万円と縮小して、廃止に至ります。その限界控除の金額は会社が消費税をプールしていた金額を意味します。

   (3)創設時に消費税を課税不公平にした背景

日本は経済の2重構造になっています。多くの中小零細企業が一部の大企業を支えるシステムです。有権者のウェイトを考えれば、消費税の課税により会社の痛みを最小限にするのは選挙で勝つために必要だったのではないでしょうか。農家を例にしましょう。農家は事業規模が小さいです。課税売上高が3千万円以下は圧倒的でしょう。農家が減少傾向にありますが、平成12年でも312万戸でした。その家族も含めて有権者となれば、消費税の導入を恐れるのも無理ありません。その恐れは消費税の増税を打ち出した政党が選挙で敗北していることから証明されています。

インボイス方式の導入だけでは課税の公平の実現するのには不十分

消費税が会社にプールされているのは制度の欠陥だけはなく滞納されていることにも挙げられます。実は国税の中でも滞納が最も多いのは消費税です。

黄色の部分が消費税です。滞納額は3千2百億円を超えています。原因は入金される消費税を会社が事業資金に流用するためです。インボイス方式の導入で課税売上高が増加すれば、滞納額の増加が懸念されます。

まとめ

あなたが消費税を支払うゴールは会社にキチンと納税してもらうことです。プールしたのでは、本来の目的である社会に還元されることはあり得ません。したがって、国の使い道はもちろん、会社が納付するかどうかを厳しく監視する目を持つことが国民に求められます。

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