
年20%の変動リスクがついてもおかしくない
まず外貨預金がリスク商品である最大の1つ目は、「為替」です。すべての資産を円で保有するのに危機感を持つ人が、一部の資産を外貨で持つのは、正しい行為といえます。しかし、それは同時に為替の影響を受けることでもあります。
単純な話ですが、1ドル=100円の時に100万円をドル換算すると、1万ドルです。1年後、1ドル=120円と円安になっていれば、円換算で120万円になり、1ドル=80円と円高になっていれば、80万円です。(各種手数料や税金はここで考慮せず。)
預け入れ時と比べて満期時が、円安であれば「為替差益」が発生し、円高であれば「為替差損」が発生します。もし、為替の値動きが金利を下回る予測であれば、それほど大きなリスクとはいえないかも知れませんが、実際に直近の過去では、2015年6月に1ドル=125円だったものが、1年後の2016年6月には1ドル=99円まで円高になりました。20%を超える値動きは、先ほど挙げた例と変わりませんね。
1年で20%を超える可能性もある変動性商品、である以上、皆さんが認識している「(円)預金=ローリスク・ローリターン」の構造が、外貨預金には通用しない事がお分かりいただけると思います。円預金と外貨預金は、リスク容認度合いで見ると、まったく別物なのです。
TTSとTTBは、銀行の手数料を知る数字
次に特徴なのは、「手数料がかかる」事です。預金で手数料といえば、ATMでの入出金時や、他支店・他銀行への振込手数料などが身近でしょう。しかし海外に行かれる場合、両替時にも手数料がかかるご経験、みなさんも覚えがあるはずです。「円を外貨に替える」「外貨を円に替える」ことで、手数料が発生します。
ここでチェックすべき為替は、市場レートではなく、銀行レートであるTTS(Telegraphic Transfer Selling)とTTB(Telegraphic Transfer Buying)です。TTSは「円を外貨に替える際」に用いられ、TTBは「外貨を円に替える際」用いられます。市場レートとの差額が、銀行の「手数料」となるわけで、円建て預金では発生しない類のものです。
例えば市場レートが1ドル=100円で、TTS:101円、TTB:99円とします。100万円をドルに交換すると、100万円÷101円=約9,900ドル本来市場価格では1万ドルですから、差額の約100ドル=1万円が、銀行の儲けになるわけです。
銀行の儲けといえば、金利面での儲けもあります。オーストラリア(豪ドル)の政策金利は、2017年3月現在1.50%です。対して日本の政策金利(無担保コールレート)は、3月15日現在▲0.046%、金利差額は1.546%です。約300万円~1,000万円分の1年定期外貨預金(豪ドル)の金利をみてみると、有名メガバンクは0.60%、ネット銀行では1.05%と差があるものの、先ほどの2国間金利差には程遠い数字です。つまり、2国間の政策金利差と、銀行の外貨預金金利差が、銀行の儲けになっているのです。
銀行破たん時に、外貨は保証されない
リスク面では、ほかに円預金と異なるのが「ペイオフ対象外」であることです。ペイオフとは、預金者保護制度である「預金保険機構による、銀行破綻時の預金保障」です。日本に本店のある銀行や信用金庫はすべて、この預金保険制度に加入しています。金融機関が破綻した際、普通口座では1金融機関につき1預金者1,000万円とその利息まで、保護されています。しかし外貨預金は、同じ「預金」と名前のつく商品であるのかかわらずこのペイオフの対象外です。
いかがでしょうか。外貨預金が、日本人の大好きなローリスク商品の代表選手「円預金」とは、まるで違う商品であることが、お分かりいただけましたでしょうか。
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