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『確定拠出年金』の3つの節税ポイント』
前回の記事より、以下の税金が安くなるということを紹介しました。
ポイント① 毎月の掛金が全額「所得控除」の対象
ポイント② 投資先を選んで運用し、得た利益は非課税
ポイント③ 60歳以降の受取時、「退職所得控除」・「公的年金等控除」の対象
ポイント①については、こちらの記事をチェックください。
今回は、ポイント②、③について詳しくお話します。
② 投資先を選んで運用し、得た利益は非課税
『確定拠出年金』には、どんな金融商品があるのか
『確定拠出年金』では、さまざまな金融商品を取扱っています。
金融商品のタイプは、「元本が保証されるタイプ」と「元本が保証されないタイプ」の2つに分かれ、「元本が保証されるタイプ」には、定期預金・保険、「元本が保証されないタイプ」には投資信託があります。定期預金や保険で運用すると自己資金が減ることもなく安心ですが、60歳まで預けても資金が増えることもほぼありません。一方、投資信託は、ご存知のとおり、運用によって増えることもあるし減ってしまうこともあります。
どこで『確定拠出年金』は取り扱っているのか
国民年金や厚生年金といった公的年金は、日本年金機構が取りまとめていますが、『確定拠出年金』は、確定拠出年金運営管理機関として登録した金融機関や保険会社(以下、金融機関という)がそれぞれ取扱っています。個人型の『確定拠出年金』の場合は、自分で金融機関と投資する商品を選ばなければなりません。事務手数料や商品の数、投資信託の保有コストなどを比較して、自分にあった金融機関を選びましょう。ちなみに金融機関では「元本が保証されるタイプ」を含む3種類以上の商品を提案することと決められています。
運用益にかかる20.315%の税金がかからない
現在の低金利において、預貯金につく利子はごくわずかですが、そのわずかな利子に対しても20.315%の税金がかかっています。当然、投資をした時の運用益にも、通常20.315%の税金がかかります。
例えば、投資で100万円の利益が出た場合、20万3150円は税金として差し引かれ、手元に残るのは約80万円。20万円もあれば、海外旅行に行ける金額ですよね。
しかし、『確定拠出年金』を利用した運用益に対しては、この税金はかかりません。2014年に始まったNISAも、運用益は非課税ですが、『確定拠出年金』との大きな違いは、運用益に対する非課税の期間がNISAは最大10年間なのに対し、『確定拠出年金』は70歳までという点です。若い世代が『確定拠出年金』を利用した場合、非課税の恩恵を受けられる期間もそれだけ長くなるというわけです。
③ 60歳以降の受取時「退職所得控除」「公的年金等控除」の対象
『確定拠出年金』の出口を知っておこう
『確定拠出年金』は原則として60歳まで引き出すことができません。簡単に引き出せない代わりに、加入期間中、ポイント①②でお話したような節税メリットがあることはご理解いただけたでしょう。加入期間中もうれしい節税効果がありましたが、加入期間が満了し、ついに、預けていたお金を受け取る時にも、『確定拠出年金』には節税できるシステムが用意されています。それがポイント③の受取り時、「退職所得控除」・「公的年金等控除」の対象です。
『確定拠出年金』受け取りの手続きとは
60歳以降になって、『確定拠出年金』を受け取る時がきたら、個人型で『確定拠出年金』に加入している方は運営管理機関(金融機関)へ、企業型の場合は、会社へ必要書類を提出します。
受け取り方法には、
・全額または一部を一時金で受け取る
・年金形式で受け取る
・一部を一時金で、残りを年金形式で受け取る
の3つの方法があります。
どの方法を選ぶかによって、提出する書類にも違いがあります。
一時金受け取り=「退職所得控除」の対象
「退職所得控除」は、本来、退職金にかかる所得税を軽減するために利用することができる控除ですが、『確定拠出年金』を一時金で受け取る時にも、この控除が利用できます。
退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額※1)×1/2
※1 退職所得控除額の計算式
・払込年数20年以下の場合……40万円×払込年数(80万円未満なら80万円)
例)15年間『確定拠出年金』に加入して、760万円を一時金で受け取る場合
40万円×15年=600万円(退職所得控除額)
760万円-600万円×1/2=80万円
退職所得の金額は80万円でこれに対して税金がかかる
・払込年数20年超……800万円+70万円×(払込年数-20年)
例)28年間『確定拠出年金』に加入して、1400万円を一時金で受け取る場合
800万円+70万円(28年-20年)=1360万円(退職所得控除額)
1400万円-1360万円×1/2=20万円
退職所得の金額は20万円でこれに対して税金がかかる
このように、「退職所得控除」が利用できることによって、退職所得が大幅に減らすことができ、これにかかる税金を軽減できるのです。
年金形式で受け取り=「公的年金等控除」の対象
『確定拠出年金』を年金形式で何年かに分けて受け取る場合、他の公的年金などと合計した収入金額から「公的年金等控除」を引いて所得金額(雑所得)とすることができます。
所得金額(雑所得) = 公的年金等の収入金額の合計×割合-控除額
年齢 | 公的年金等の収入金額の合計 | 割合 | 控除額 |
65歳未満 | 70万円以下は所得金額ゼロ | ||
70万円超130万円未満 | 100% | 70万円 | |
130万円超410万円未満 | 75% | 37万5000円 | |
410万円超770万円未満 | 85% | 78万5000円 | |
770万円以上 | 95% | 155万5000円 | |
65歳以上 | 120万円以下は所得金額ゼロ | ||
120万円超330万円未満 | 100% | 120万円 | |
330万円超410万円未満 | 75% | 37万円5000円 | |
410万円超770万円未満 | 85% | 78万円5000円 | |
770万円以上 | 95% | 155万円5000円 |
例)61歳で『確定拠出年金』を年間100万円年金形式で受け取る場合、100万円×100%-70万円=30万円
30万円が所得金額(雑所得)となり、これに対して税金がかかります。
メリット・デメリットを確認したら、無理なく始めてみよう
『確定拠出年金』には加入中も受取時も節税できるメリットがたくさんありました。ただ、自由に引き出せないことや、運用によっては資金が減る可能性があること、転職の時の手続きが少し煩雑であるなど、デメリットもあります。車と同じように定期的にメンテナンス(配分比率や掛金の見直し)し、必要な保険を掛ける(分散投資)ことで、より豊かな生活を送るための強力なアイテムとなるでしょう。老後の資金づくりとして、無理なく始めてみませんか。