Topページ > ライフスタイル > 【ドイツ駐在便り】欧州で発生した難民問題と大量の難民を受け入れたドイツ、そしてその後は
公開日:2017年4月15日
更新日:2017年4月17日

2015年に大きなニュースとなった、ヨーロッパ各地への難民大量流入問題。日本でも毎日のように報道されていましたので、目にする機会が多かったかと思います。
とりわけドイツは、メルケル首相の積極的な人道支援方針から難民の大量受け入れが決定され、異常な数の難民がドイツ国内に押し寄せ、大混乱を招く事態となりました。このような状況を、ドイツ人はどのように対応しているのか、そして移民の発生から1年半、難民の流入は現在も続いているのでしょうか?

そもそも、難民と移民の違いは?

難民と移民、日本に暮らしていると日常では慣れない言葉ですが、この二つの言葉には意味に大きな違いがあります。難民も移民も、母国以外の国に住む外国人のことを指しますが、移民は、自ら望んで外国に移り住んだ人々 (仕事、留学、結婚、より良い生活環境を求めてなど)、そして難民: 戦争、自然災害、政治的理由、あるいは迫害などにより母国を離れることを余儀なくされた人々のことを指します。

2015年、ドイツに殺到した難民は都市人口に匹敵!

ドイツは2011年のシリア内戦から積極的にシリアの難民を受け入れていましたが、その後の紛争悪化により2015年、メルケル首相はシリアからの難民は特別措置を設け、無制限で受け入れる方針を決定します。その結果、シリアだけでなく中東各地、さらには内戦状態にはない北アフリカなどの国々からも難民や移民が一気にドイツへ押し寄せる事態となったのです。

ドイツに入国したその数は、2015年だけで109万人(内、ドイツでの難民申請希望者数は89万人:ドイツ連邦内務省データより)、その前年2014年の難民数の約5倍となりました。ドイツ第四の都市、ケルンの人口が約106万人ですので、イメージとしては国内に新たな大都市が増えた、といったことに匹敵します。それもたった一年でということだから、いかにそれがドイツにとっては異常事態であるかが想像できます。

当然対応は追いつかず、整備を行う警察官・難民局・通訳・収容施設など全てが不足し、パニック状態となりました。

各国から難民がドイツへ来る理由

なぜ、難民はドイツを目指すのでしょうか。シリアからの難民に限って言えば、特別措置と無制限の受け入れが決定されたことが大きな理由と考えられますが、その他として、ドイツはヨーロッパ諸国でトップの経済力があり、他の国を選ぶよりも良い生活ができると思われていること、東西ドイツ統合後、最低の失業率で人手不足であるドイツ側の意向でもあったことが挙げられます。ドイツも高齢化社会であり、若者が少なく職にありつける確率が高い、ということになります。

理由の最後に、難民への対応フローが法律でしっかりと決められており、待遇が非常に手厚いことも挙げられます。 (難民の待遇については、また次回お伝えしたいと思います)。 逆に、受け入れ側のドイツは少子高齢化問題も相まって、長期的にみると難民の職業訓練や教育が今後の経済成長を担えるのでは? という目論みがあるようです。

難民受け入れに対するドイツ人の反応

ドイツはもともと人権を重視する国であり、人道支援には極めて積極的です。その背景には、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが行ったユダヤ人への迫害の反省と責任があります。またドイツ基本法では第一条で、『人間の尊厳を尊重・保護することは国家権力の義務』と定めており、国連やEUの人権に関する中心的条約のほとんどはドイツが批准しています。

ドイツの中でも特に所得の高いバイエルン州では、2015年当初は非常にあたたかい難民歓迎ムードに包まれていました。国内トップクラスの治安の良さを誇る同州でしたが、2016年7月18日にヴュルツブルクの列車内で、17歳の難民少年が斧とナイフで乗客を襲い重傷を負わせる事件が発生、22日にはミュンヘンのショッピングセンターで銃乱射事件が起こり、9人が犠牲になりました。さらに24日にはアンスバッハの野外コンサート会場付近で爆発があり、15名が負傷しました。

身近で立て続けに起こるテロや凶悪事件を目の当たりにし、バイエルン州内でも難民受け入れに対して不安視する声が出始めました。

また、旧東ドイツのベルリンやドレスデンでは、そもそも所得が低く高い税金で自分たちの生活が厳しい中での、連邦政府の難民・移民への手厚い待遇に不満を募らせている人々が、度々難民排除のデモを行っています。

(※難民・移民への給付金は全て国民の税金で賄われています)

メルケル首相の支持率も徐々に低下し、治安悪化の社会不安から各地で難民施設の攻撃や放火が行われている事実もあります。世論調査では、国民の4割が難民受け入れに不安を示しています。

そして現在、今後の課題

最近では難民問題があまり報道されなくなりましたが、難民はもうドイツに来ていないのでしょうか。答えはノーで、今でも難民は来ています。しかし、その数は大きく減少傾向にあります。これは、ドイツを始めヨーロッパ各地で難民が増えすぎたことと、テロなどの増加によって、今まで受け入れを行なっていた各国が難民受け入れの態度を改め難民の数を制限したこと。さらに2016年3月にEUとトルコが、ギリシャへの密航者をトルコへ送還する協定に合意し、同時にバルカン半島各国(クロアチア・スロベニア・セルビア・マケドニア)が次々と国境を閉鎖した、いわゆる『バルカン半島閉鎖』が主な原因です。

これらの理由により、バルカンルートから北ヨーロッパへの難民流入は減少したものの、ギリシャで行き止まってしまった数万人の滞留難民をどうするかが現在大変大きな問題となっています。それらはアテネ市内でも多くみられ、行き場のない彼らはテント暮らしを余儀なくされているのです。

※「バルカンルート」とは主にトルコを経てギリシャに入った難民や経済移民が、バルカン半島諸国を経由しドイツや北欧諸国などへ向かうルートのことで、2015年に欧州入りした100万人以上の難民・移民の80%以上がこのルートを辿っています。

今回の難民問題は主にヨーロッパで発生していますが、受け入れるヨーロッパだけでは限界に来ており、他の大陸の国々も含めて解決すべき世界的な問題です。 難民受け入れを拒否し、巨額の拠出金を出している日本。 今後、拠出金の提供だけでは、また国際社会から批判を浴びかねない時代の再来が来るかもしれません。

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