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なぜ今、ガス自由化なのか
電気・ガスの自由化は、「エネルギーシステムの一体改革」という国の政策の一環です。これまで縦割りだった市場の垣根を取り払い、総合的なエネルギー市場を創り上げることで、次の2つの改革を目標にしています。
- 日本の成長を牽引する産業へ:革新的な技術の導入、異なるサービスの融合などのイノベーションを創る
- 消費者利益のさらなる向上へ:エネルギー選択の自由拡大、料金の最大限抑制、安定供給と保安の確保などの消費者利益を図る
これによれば、電気・ガスの生産方法に、従来型の発電所やLNG基地(液化天然ガスから都市ガスに加工する施設)だけではなく、再生可能エネルギーなど地域の資源を活かすことも、改革のひとつに位置づけられています。では、私たちの暮らしに直接かかわる「消費者利益の向上」は、どのようなものがあるのか、見ていきましょう。
新規参入の事業者の顔ぶれは?
消費者利益のひとつ、ガス会社の選択肢の拡大はどのくらい進むのでしょうか。今までは地域ごとの独占供給でした。なかでも、東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスの4社は四大事業者と言われています。ここに新規事業者が参入することでサービスの競争が生まれ、ガス料金の節約が期待できます。電力自由化では携帯電話会社、鉄道会社、石油会社、ガス会社、商社など、本当に様々な企業が参入してきました。ガス自由化でも、同じ状況が想定されますが、他にも、インターネット接続業者(プロバイダ)、住宅メーカー、通販サービス、家電量販店等も、新規参入業者として国が想定しています。
実は、工場や病院等では1995年からすでにガス自由化は始まっていて、30社以上が新規参入をしています。東京電力や関西電力などはガスの販売実績もあり、すでにガス全面自由化に向けてプロモーションをはじめています。東京電力は、2017年7月から、東京ガスのエリアを中心に家庭向けの都市ガス販売を始めることを発表しました。どのような料金プランになるのか、今から楽しみですね。
電気では、自由化の効果はあったのか?
ところで、電気の自由化はどのくらい進んでいるのでしょうか。電力広域的運営推進機関の発表によれば、すでに全国で282万100世帯が、電力会社の切り替えをしています(2017年1月31日現在)。全国の世帯数が約5695万世帯なので、約5%の世帯が切り替えている計算になります。普及はまだまだこれからですね。
また、総務省の家計調査から、電気代平均額を調べてみました。電気代がかさみがちな8月を比較してみると、電気自由化前の2015年では1万859円、2016年では9394円と安くなっています。電力会社の切り替えが進めば、さらに電気代も安くしていくことができるでしょう。
ガス料金は安くなるのか
海外でもガスは自由化されています。たとえばイギリス、ドイツ、アメリカなどでは、電気とガスのセット販売が一般的です。日本でも電力会社の参入が決まっていて、セットで割引になる可能性は高いでしょう。実際、エネルギー庁が挙げている割引プランとしては、次のようなものがあります。ガスと電気の同時契約による割引、携帯電話料金とのセット割引、通販サービスとの連携でポイント付加、住宅メーカーが提供する住宅購入顧客への割引など、どれも他業種のサービスとの融合がキーワードですね。つまり、最適プランの選択のためには、ガスの使い方だけではなく、ライフスタイル全体から考える必要があるということです。
ガス会社の切り替えをするなら、知っておきたい注意点
「自宅内のガス機器点検は、契約先のガス会社が担当」
定期的に行われている、ガスコンロや給湯器の点検は、契約先のガス会社が担当することになります。また、危険発生防止の周知も契約先のガス会社が行います。信頼できるガス会社を選びましょう。
「緊急時は従来のガス会社が担当」
緊急時対応やガス管の保安は、従来のガス会社が行います。自由化とは言っても、一般の消費財とは違い、ガスは非常に公共性の高いものです。保安に間違いがあってはいけないための対応がなされています。
新規参入の予想されるため、焦りは禁物
ガス料金は冬場に高くなりがちです。そのため、4月の自由化直後に焦って切り替えなくても、大きな損にはならないと考えられます。それよりも、7月の電力会社の参入を待って、業者が出揃ってから各社のサービスを比べるのが賢いやり方でしょう。
ガスの自由化で、選ぶプランによってはガス料金以外も節約できそうですね。まずは今までのガス料金と使用量を確認しましょう。そして、生活費全体も見直しに備えて整理しておくと、効率よく各社比較できます。新サービスは期間限定のキャンペーンをすることもありますが、そんな時にあわてて損をしないよう、あらかじめ準備万端にしておきましょう。