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更新日:2017年3月13日

「争族」になりやすいのは、前回お話しましたように家族関係が複雑な場合が典型的です。ただ、そうでなくても相続人同士で不公平感があると次第に「争族」になることもあります。また「争族」とまでいえなくても、すんなり話がつきにくい人がいると時間がかかることになります。遺産の内容によっても「争族」問題となることも割とあります。遺言があれば、スムーズに時間をかけずに終わらせられる場合でも、ないと時間もかかり色々な作業の手間・負担がかかってしまいます。
それでは、遺言がない場合にはどういったことが問題になるのでしょうか。これまで私が法律相談などで経験したことから取り上げてみます。

亡くなった人から受けた援助に金額差がある場合

亡くなった人に子どもが何人かいて、子ども(相続人)それぞれに結婚祝いや家を建てたときの祝いなどを平等にしていると、相続人の間で不公平感を感じることは少ないでしょう。ただ、実際のところはやはり手をかけた子どもとそうでない子どもが出てきて、それが孫に対する援助の違いなどになり、相続のときに対立する原因になることが割とよくあります。

例えば、亡くなったAさん(母親)にはすでに夫は亡く、子どもが2人(Bさん・Cさん)いたとします。Aさんは長男のBさんを可愛がり、海外への留学を始め、車の購入資金や自宅建設資金の援助をしていました。他方で、二男のCさんには、嫁とあまり仲がよくないこともあり、結婚祝いはしたものの、それ以外でお金の援助を受けたことがないとします。この場合、相続が発生したときに、遺言がないと単純に遺産を法定相続分通り半分ずつとすると、これまでかなりの援助を受けていたBさんはさらに相続をすることになります。Cさんとしてはかなり不満が出てくるでしょう。

実際には、こういったAさんのBさんに対する援助(特に自宅建設資金の援助)については、「生計の資本として贈与を受けた」とみて「特別受益」としてAさんの遺産に贈与分の持ち戻しをします。その上で、法定相続分からこのすでに受けた贈与分を引いて相続するということになります。

例えば、遺産が2000万円、すでにBさんが受けた贈与が800万円、Cさんが受けた贈与が200万円とすると、遺産はこれらを戻して800万円、200万円も合わせた3000万円とみます。そして、法定相続分で分けると1500万円ずつになりますが、Bさんはすでに800万円贈与を受けているのであと700万円を受け取る、Cさんは1300万円を受け取るということになります。こうみると、逆に法定相続分通りの方が特に取り分が公平なようにも思えます。ただ、現実にはどういった援助を相続人が亡くなった人から受けていたのか、援助を受けているわけでない他の相続人からすると、証明が難しいこともよくあります。

身内の場合通帳の履歴にはっきりと出てこない、現金でのやりとりのことが多いと思います。また相続が発生するまで期間が長いのが通常でしょうから、その間に証拠になりそうなものがなくなってしまい、実際には亡くなった人から援助があったことを証明するのは難しいことも多いです。そうなると、生前あんなに援助をしてもらっていた(ようである)のに、証明できないから結局法定相続分通り、あるいはそれに近い金額で相続をする人が出てきて、不公平感が出てくるのです。

他方で、特に理由があって援助を受けていたということもあります。長男なので、将来家業を継いでもらいたいから、その分家業に役立つ学費などの支援をしてもらっていた、といった場合です。こういったケースであれば逆に援助があったのでそれを持ち戻すと言われると、家業を継ぐ上で色々な負担があるのを前提としての支援をしてもらっていたのにという不満が、逆に相続人から出てくるでしょう。これを防ぐには、あらかじめ遺言書で援助を受けていた相続人(上でいうと長男)については、遺産への持ち戻しを除外(「持戻免除」といいます)しておくという手立てをとっておくことが必要になります。

亡くなった人の介護を主にしていた人がいる

相続人の一人が主に親を引き取り、面倒をみているうちに相続が発生したとき、よくあるのがなにも面倒をみていなかった相続人から、遺産を渡せというものです。民法では亡くなった人の面倒をみることで、亡くなった人の遺産の維持・増加に特別に寄与したという場合には、「寄与分」として相続の上で考慮するとしています。しかし、実際にはこの、「遺産の維持・増加に特別に寄与」というのがネックになることもあります。親の介護については、介護保険料でカバーできない分が出てきたときに、親の年金で穴埋めしているのが通常ではないかと思います。

また、食事については提供していたものの、やはり親の年金から少し受け取っていたという場合もあります。このとき、たとえば同居して身の周りの面倒はみていたとしても、お金の出処が亡くなった親の年金であれば、「寄与」があったとみるのは難しいことがあります。さらに、長期にわたっての介護であれば、介護にあたって有益な負担をしていたとしても証拠がなくなってしまうことがあるのは最初のケースと同じくあてはまります。

そうなると、面倒をずっとみていた相続人からすると、面倒をみる負担だけ自分が負うのはおかしい、それなら面倒をみていた分も考慮しての相続でないと納得がいかないでしょう。また、仮に面倒をみていた分、外部の有料介護サービスを使わずにすんだといえるとしても、金額的に評価するとさほどの金額にならないこともあり、さらに不公平感が増すこともあります。

できれば、事前にある程度まとまって介護をしてくれる相続人に多めに相続させる遺言をしてもらっておくと、介護を引き受ける相続人も不公平感を感じずにすむこともあるでしょう。その他、特に祖父母の世代かそれより前の世代の場合、相続人がかなりたくさんいて、その中に海外在住で連絡を取りづらい人や行方不明になっている人がいるため、遺産分割の話し合いができないケースもあります。また、報道では最近再婚をする人が増えているという話もあるため、前婚の子どもと後婚の子どもとの間で相続問題が発生することもあるでしょう。こういった場合でも、あらかじめ遺言書があると「争族」となるのを防げることがあります

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