
生命保険=死亡保険は古い!保険は「生前保険」の時代
本題に入る前に、「生命保険」の定義を整理します。保険はいくつかの分野に分けられますが、業界で専門的にいう定義と、一般の方が「通称」で言う定義とで、少し異なります。「生命保険」=「死亡保険」 の解釈は高齢者に多く、「生命保険」=「死亡・介護・医療・がんなど、生命保険会社の取り扱う商品全般」と考えるのは、若年層である傾向があります。世界一の長寿大国である日本において、共働きが当たり前のこの時代、家族のために残す=「死亡保険」ではなく、生きていくうえでのリスク保障=「生存保険」が当たり前になっています。
現代のポピュラー:35歳の新婚夫婦・子供なし・共働き世帯
実際に多い相談事例で確認してみましょう。
妻:
私は独身時代に親に掛けてもらっていた保険があるのですが、主人は保険に加入しておらず、何か入っておいたほうが良いのではないでしょうか。
夫:
結婚したことだし、万一のことや、大病や事故により治療や闘病をして、仕事が続けられなくなった場合に備えたい。でも、妻のように20代前半から掛けていた場合に比べて、保険料は割高になりますよね?
FP:
お考えはもっともですね。保険料についてですが、当然20歳と35歳の保険料は同じ、とはいきません。例えば20歳男性のがん保険、3,500円のプランが35歳男性なら、5,000円です。月々1,500円の差で、85歳までの50年間では90万円の差が発生します。20歳から加入していた人は35歳まで掛けていた15年間の保険料63万円が既に保険会社に支払われていますが、差し引いたとしても、差額33万円が、20歳で加入した人と、35歳で加入した人との差になります。
妻:
同じ保険内容でこの差なら、もったいない…。
FP:
奥様のおっしゃるとおりです。でも今「同じ保障内容なら」とおっしゃいましたね?
妻:
はい、同じじゃないのですか?
FP:
ええ、確かに同じ保険商品の同じプランで比較しました。でも現実では、15年前のがん保険と今のがん保険を比較することはできません。同じ商品が15年も販売されているなど、見たことがありませんから。たとえ同じ商品だったとしても、予定利率が異なるので、事実上先ほどのような比較は不可能です。そもそも生前保険は、ある程度その時代に合うように見直さないと「時代遅れの役に立たない保険」になってしまいます。保険の見直しなどで仮に35歳で新規契約した場合、その年の年齢で算出しますので「20歳から加入していた」というメリットは消滅します。
夫:
ということは…結局若いうちに入ったほうが損にならないか?
FP:
結局皆さんが「損か得か」というモノサシで「若いうちに入ったほうがよいのかどうか」聞かれますが、「わかりません」が、私の見解です。
妻・夫:
…(ガッカリした顔)
FP:
奥様、ガッカリなさらないでください。仮にこの15年間、ご主人にがんの診断が出ていれば、今このように保険のお話はできません。実際に20代のお客様で、がんの治療を行っているお客様が、私の担当でも数人いらっしゃいます。
妻:
それはそうですよね。たまたま保険のお世話になることがなかったから、こんな仮定の話で比較しているのですね…。
夫:
保険の世話になる事がいつか分かっていたら、そもそもその直前で加入するよね(笑)
FP:
ご結婚されたのを期に、お二人はリスクについて考えられましたね。自分だけの身体じゃない、という意識からそのように至ったのかもしれませんが、だからといって独身の方がこのような、生前保険が必要ない訳でもありません。
夫:
確かに…。妻に迷惑をかけてはいけないという思いは、独身時代はそれが「親」や「兄弟」に変わるだけだもんな。
妻:
結婚して必要になるのではなく、もともと必要だったのね。
FP:
「いつ加入するのか」は、年齢で決まるものでは無く、その背景や必要性に応じて決まるものです。そもそも保険料は「年齢と性別のリスク度合いに応じて、保険料が異なっている」のですから、よほど予定利率の高い時代でない限り、生前保険は、加入した年齢での保険料がそのままリスクに反映しているのです。それよりも我々が警戒、というか心配するのは、「保険加入が出来る体況か」ということです。ご本人が健康だと言っても臨床医学と保険医学は異なり、年齢が上がる程そのリスクは保険料に直に「損」という形で現れます。これははっきりと「損」と言えるものです。同じ時期に加入する同じ予定利率の同じ保障内容の保険で、20%も保険料が異なる事もあるのですから。
妻:
話をまとめると、加入すべき保険があるなら、先延ばしにするべきではない、ということですね。
FP:
おっしゃるとおりです。相談事例を見ていただきましたが、「保険加入が出来る体況か」ということを考えれば、加入すべき保険は先延ばしにしないということが大切です。
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